ラッピングコーディネーター 五味栄里先生によるラッピング講座。リボンの結び方、箱の包み方、季節に合わせたラッピングやエッセイなど

日本語検定


2018年の夏は猛暑が続き「過酷!!」の一語に尽きる毎日でした。
私にとりましては、暑さのダメージの上に夏風邪も長引き、調子が上がらない日々が多かったので、先日我が家のベランダから、天の高さの極みに刷毛を掃いたような秋の絹雲を見た時、やっと夏が終わったのか・・とフーっと安堵のため息が漏れました。

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私の仕事の一つに「美しい日本語を話す」というフィールドがあります。少し前のお話になりますが、日本語を指導する側ばかりではなく、受ける側の体験もしてみようと思いたち、今年6月に日本語検定の受験を試みました。

受験などウン十年ぶりのことで、まずは受験するには、受験勉強をしてみなければと、参考書を書店で探してみました。ところが、とても種類が少なく、外国人向けのものばかりでなかなか良いものが見つかりませんでした。日本語を改めて勉強してみようなどと考える人は、案外少ないのかもしれません。写真の物はネットで探したものです。1

他に資料はないのかと探しあぐねて「日本語検定 勉強」としてネットで検索しましたら、それに応じた通信教育がいくつかありましたので、試しに受講してみました。
早速、段ボール箱にいっぱいに詰った参考書、問題集などが送られてきました。2勉強の分野は敬語、文法、漢字表記、語彙、敬語と4つに分かれております。3
面白かったのは語彙の分野でしょうか?

うたた・・意味は 一段と思いが強まる時に使う     転たと書きます
使用例「かつての寒村の近代化を見るたびに、うたた、今昔の念に堪えない。」

けだし・・意味は確信をもって推量すること       蓋しと書きます
使用例「その時の彼の言葉は、蓋し、名言と言えるだろう。」

など、あまり使わないような言葉も多数出てきて、これは受験生も手を焼くに違いないと少し気の毒な感じがいたしました。。

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慣用句の分野では、中国の古典に由来している言葉は、その深い歴史の裏打ちがあり、再度紐解けば私自身にもとても勉強になるかもしれないと、多いに興味をひかれました。そういえば、学生時代に、古典(漢文?)の授業で習いました、「人生すべて塞翁が馬」、「五十歩百歩」、「矛盾」、「杞憂」などの言葉は先生がお話してくださった歴史と合わさって決して忘れませんよね。

「石に漱ぎ流れに枕す」という慣用句、聞いたことがあると思います。これは夏目漱石のペンネームの由来なのですが「枕石漱流」(ちんせきそうりゅう)➡「石を枕にして川で口を漱ぐ俗世から離れた生活」を言い間違って逆さに「枕流漱石」と言ったのを笑われた人が流れに枕するのは耳を洗うため、石に漱ぐのは歯を磨くためと強引にこじつけた故事から、負け惜しみの強いこと、ひどいこじつけのことを言う。のですが・・、明治の偉大な文化人の偏屈ぶりが、いかにもという感じで笑えますね。

さて、受験の話に戻りますが・・試験日は6月8日でした。受験人数は全国で4万人を超えるほどで、私の受験日にも会場となる大学の校舎にはたくさんの若い方がいらしてました。
試験開始のときに、配布されたビニール袋に入った問題と解答用紙を見た時は、アドレナリン全開で久しぶりの緊張感に「ああ心臓に悪い・・。」と少々の後悔とともに、「よーい始め」の声でビニールの袋を開けました。

結果は合格を頂きました。
残念なことに手元にあった問題集からは、ほとんど問題は出ませんでした。答案用紙にペンを走らせながら、受験勉強なるものが全く役に立たない現実に、これは自分が普段使っている日本語のレベル検定だなと思いました。現実としては、試しに生徒の立場になろうとしただけなのに、プロ意識ゆえにむしろその結果が恐ろしくて無事合格の通知を頂いて、今はほっと胸をなでおろしております。

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ちなみにその通知が届いたのは、夏バテ真っ最中の最悪の体調の時でした。封筒が目の前に来ているのに,開けたくなくてそのままにしておりましたら家人が早く開けたら?と申します。その時は自分の健康をはじめ、仕事のことやプライベートなことまで絶不調だったので嫌な予感とともに、封筒を開けました。合格証を見た時は、それは天から届いた恩恵の一筋の光にも似て、私の絶不調のすべての因縁を、柔らかい、温かい優しい光で照らして洗い流してくれているような感じを受けました。試しの受験などと不遜な考えで受けたにもかかわらず、神様の啓示と思ってよろしいのでしょうか?体調の回復の兆しとともに、私たちが普段使っている日本語に対して改めていろいろな新しい思いを持つことが出来ました。

美しい日本語は現代では若者言葉に押されて、存在が危うい文化となっております。でも若い女性が目上の人に対する敬語を上手に使い、お聞きしていても品格のある言葉を使うことができたならば、それがどれほど素敵で魅力的な事なのか・・この受験を通して、私はそれを伝えるためにもっと努力をしなければいけないと感じました。
そのような夏の経験でしたが、今は体調もすっかりと回復いたしまして「虚心坦懐」元気に楽しくお仕事も頑張っております!本当に「人生塞翁が馬」ですね。4