ラッピングコーディネーター 五味栄里先生によるラッピング講座。リボンの結び方、箱の包み方、季節に合わせたラッピングやエッセイなど

曲がり角の先


少し昔のお話ですが、いずれの国なのかスイスかオーストリアか忘れてしまいましたが、トレッキング仲間4人で山道を歩いていました。すると向こうから来た同じ旅行者に話し掛けられて二言三言話している内に「あの道を左に曲がって、あと3キロほど行くと滝が見えるよ」と、100メートル先の分かれ道を教えてくれました。「きれいか?」と聞いたら「そりゃぁ、もうすごいよ!」というので、それなら寄り道をしようという事になり、その人の言った通り左に曲がり滝に向かって歩き始めました。
ところが道は針葉樹林の中で暗く単調で15分も歩くと、すっかりと疑心暗鬼になって、一人二人が引き返そうよと言い始めました。滝の音は、かすかに聞こえてきてはいるのですが全く姿が見えないのと、見知らぬ人の情報で信用できないのと、外国での不安な気持ちも手伝って、皆立ち止まってしまいました。
すると、中の一人が「それならば、あの曲がったところまで行ってみて、見通しが立たなかったら引き返そう」というのです。道は山肌に沿って続いて200mくらい先が曲がり角になっています。その意見に皆無言で従い、とぼとぼと歩き始めました。
そして先に先頭を歩いていた人が曲がり角を曲がった途端、「うわー!!」という声。その声を聴いた残りの者が一斉に曲がり角に向かって走り出しました。
そこに見えたのは大きな谷を一つはさんで遠く2キロほど対岸に轟轟たる瀑布が落ちている壮大な景色でした。音がかすかにしか聞こえてこない理由もこれでわかりました。谷は足元直下500m位の深さでしょうか、谷底には小さな可愛い村落も2~3か所見えます。氷河が作った大きな谷の雄大な空間と地球の大地に直角に切れ込むように落ちていく、もうもうたる水しぶきを裳裾のようなまとった瀑布…そしてあまりに小さい人間の営む村落。皆その景色のスケールに圧倒されたまま無言でその場に立ち尽くしてしまいました。

先日、40代の男性からご自分の仕事の直面している困難さを聞く機会がありました。
励まして差し上げたい気持ちがあるのですが、専門外の私にはうまい言葉も出でこずただ肯いて聞いているだけでした。若いのに、自分が責任者で日本を背負って立つようなお仕事をなさっていて、外国人の文化も考え方も違う環境で悪戦苦闘している話は胸を打たれました。
「先が見えないのが辛い」とおっしゃっている言葉に、はっと上述の滝の話を思い出しまして、そのお話をいたしました。
仕事をしていて、なかなか成果が出なくて、ただ待つしかない時は、悪く物事を考える方向にどうしても行ってしまうのが人の常。そのような状況の時に足元ばかりを見ないで、その先を見続ける勇気は大切にしないといけないのでしょうね。曲がり角の向こうにきっと何かがある、それを信じ続ける夢を失ってはいけないのだと思いました。ひょっとしたら曲がり角を曲がってもまだまだ暗い道が続いている現実も大いに考えられるのですが、でも必ずびっくりするほどの美しい景色が広がる瞬間は待っている事を信じることが大切なんだと思いました。すべての要素がマイナスの値を持ってしまった時こそ、曲がり角の向こうを考えることが、起死回生の方策なのかもしれません。
私のお話を聞いた後で、彼はにっこり笑って「そうですね」と一言そして白い歯を出してすがすがしく笑いました。
彼は再び海外へ旅立っていきましたが、日本人の代表としてその曲がり角に出会うべく、その先にある何かを信じて、今もひたすら歩いていると思います。

私達も2014年の曲がり角を今まさに曲がろうとしております。
この先に何があるかは一人一人の胸にある夢と希望によってそれぞれ違うと思いますが、2015年の道が明るい光あふれる曲がり角がたくさんあることを期待して今年もその1歩を踏み出したいと思います。

昨年一年ご愛読いただきまして本当にありがとうございました。
心より感謝いたします
どうぞ本年もよろしくお願いいたします。
Happy New Year!