ラッピングコーディネーター 五味栄里先生によるラッピング講座。リボンの結び方、箱の包み方、季節に合わせたラッピングやエッセイなど

仕事で久しぶりに怒ったこと


最近、一つの仕事のことで心がざわざわとして落ち着かない、嫌な気分を味わいました。
人との連携の手順の食い違い、それに伴う相手の理解度が不十分,また数々のこちらに対する失礼な言動などの心配事が重なり、打ち合わせが終わった後しばらくは思い出すたびにむかむか、いらいらと、仕事の中では久しぶりな感情をあじわいました。

めったなことでは怒らない、さすがの私も今回ばかりは惨りました。
「あれだけは許せない。」といつまでも心が執着して、眉間にしわがよる、肩がこる、憂鬱になる、と「ほとんどビョーキ」の状態でした。
そして悪いことに相手に対しても何でもかんでも悪く取る、悪いことの責任はすべて相手が悪いと思い込む、という具合に私自身もとても嫌な人になってしまいました。
その怒っている最中に、たまたまその仕事の関係者のお一人にお会いするチャンスがあって、黙していようかと迷いましたが、肝心の仕事に影響が出ることが一番心配で、思い切って相談をいたしました。ここから先はその人の言葉です。

先生、今のコンサルタントは費用対効果を常に考えています。自分の提供するエネルギーとその報酬が見合っているかで仕事の方向性を決めます。はっきり言ってクライアントに愛情があるわけではありません。先生のように時間をかけて、とことん納得のいく仕事をする、愛情を持って熱血の精神で事に当たる先生は少ないです。
だから肌合いが合わないのは致し方ございません。
企業もそのような先生が居ればそれは有り難いことですが,探しても早々居ませんから、今はそのような先生を求めていないのです。と・・・・
なるほど納得いたしました。淋しく納得いたしました。

世の中、本当に変わってきているのだなと、思いました。
一つの仕事にじっくりと取り組むよりは、たくさんの仕事を機械的にこなして、薄利多売にシフトする。長いお付き合いは鼻から求めていないし、また却ってべたべたした関係はお互い負担になる。だからビジネスライクに仕事ができる。
今の時代の象徴的な一場面を切り取ったような考え方に釈然としないながらも、また反面分かったような気がいたしました。この方の言葉のお蔭で、自分が今まで当たり前にやってきた仕事を、初めて客観的に見ることができたのかもしれません。
むしろこんな時代に、コツコツと時間をかけて長くお付き合いを頂いた私のクライアント様に感謝して胸の中で手を合わせました。

今は一つのことに時間をかけることは良しとされません。変化には素早い対応が大切な時代です。企業は慈善団体ではありませんので、すぐに自分の役に立たないものは、待つ事を嫌って冷酷に即刻に切り捨てていきます。随分ゆとりが無いし,切羽詰っている感じがいたします、その中で時流の波に浮き沈みしながら、頑張って仕事をしていることはたいへんなことです。
あらためて自分の立ち位置が分かった今、本当は同業の方たちのように自分の仕事の生き方も軌道修正をしなくてはいけないのでしょうが、私は今までの方法で昔ながらの職人気質で頑張って行こうと思いました。それが私の根幹であるので修正することはできないという事も感じました。

さて、この冒頭のイライラに関して話を戻しますと、同業の方たちの仕事の仕方に考えが及んでからは、心がすっきりといたしました。
いくら怒っても、相手が改心した上に更にはこちらに詫びを入れるなんてことは、ぜったいにありえないことです。そうです相手を変えることなんて無理なことです。
でも、自分を変えることはその気になれば簡単にできることに気が付きました。
「あなたも大変だったのね。」と相手の立場を理解することが大切なことだったのです。
このような自然な思いやりの気持ちが出てきたことから、不思議に嫌な気持ちはさっぱりと払しょくされました。
仕事の中で、自分への厳しさを最大限求められるその時にこそ、相手への思いやり、暖かい関心、少しの遠慮、素直な感謝の表しなどを出せることができるか…これがその人の人間としての魅力を発揮できるか否かの分水嶺だと思います。そういう小さな暖かい気持ちの積み重ねの結果、仕事の中での信頼関係が生まれてくるのです。
それで今までやってきたはずなのに、すっかりと大切なことを忘れていました。
私は優しさと名のつくこれらの小さい気持ちを、大事な時にこそ忘れないで頑張っていこうと改めて感じました。

待ち遠しい春も、もうすぐそこに来ております。
今は柔らかい日差しの中で思いっきり伸びをして、体の隅々まで春の空気をいっぱいにためてみたい、そんな感じです。