ラッピングコーディネーター 五味栄里先生によるラッピング講座。リボンの結び方、箱の包み方、季節に合わせたラッピングやエッセイなど
三月の声を聴くと、空の色さえ冬の厳しい色から、表情を緩めたような柔らかい色に変わってきます、いよいよ春がそこまでやってきているようです。我が家のベランダの枝垂れ桜には、淡いピンクの花びらが幾重にもたたまれているような、ぽっちりと膨らんだ蕾が付き始めました。春はなんだか楽しい時が近づいてくるようなソワソワとしてしまう不思議な季節ですね。
しばらくぶりのエッセイなので出張旅行をした時の、写真をお見せしたいと思います。
青森県平川市の南田温泉にあるアップルランドというホテルに泊まりました。遠くからでもその存在が確認できる大きな「リンゴ観音様」が屋上に立っていらしてびっくり!アメリカの「自由の女神」のように左手に高々と掲げているのは「トーチカ」ならず「リンゴ」でした。
お風呂には100個くらいリンゴが浮いていてリンゴのあまーい香りがお風呂中に満ちていました。(夕食前の早い時間でお風呂には私一人、ヒマだったので…ちゃんとリンゴの数を数えました。)
京都のディナーは瀟洒なレストランでした。高台寺の隣のいかめしい門を入ると日本画家の竹内栖鳳の旧邸宅を利用したレストランの「ソドー」。窓からは夕暮れに立つ八坂の塔がすぐそこに見える絶景!京都在住の方も声を上げるほどの近さでした。実はこの日は旭川、那覇、京都と気温差40度の日本縦断旅の最終日でしたので、気も緩みがち、ニコニコと仕事の神様に感謝しきりの顔になっております。
翌日は夕方まで大徳寺のあたりをぶらぶらと散策しました。途中で尾形光琳、乾山の菩提寺を見つけて、「へぇ~」という感じで一応写真に収めました。大徳寺は何度も尋ねておりますが、中でも高桐院というお寺が好きでお庭をぼーっと見ながら30分ただただ座っておりました。紅葉も若葉もいいのですが、今回は雪があって早春の風情がひとしおでした。
箱根、伊豆長岡にも参りました。こちらは仕事ではなく高校時代の友人と「小さなクラス会」という旅でした。当然のことながら全員静岡出身という事情が効いたのか?
富士山のご機嫌がすこぶるよくて、全てを包み隠さず見せてくれました。
宝永山という、富士山中腹にある「おでき」のようなでっぱりが見えないのは淋しかったのですが、(静岡側から見えます)皆でうわーと声を上げて久しぶりの富士山との対面を喜びました。お山を見ながら我高校の恒例行事の富士登山の話に花が咲きました。
このメンバーの一人で背が高く体も大きい、当時は相当のバリバリ体育会系の若者だった男子が先生の命令で高山病の女子生徒をおぶって下山した「死ぬかと思った富士登山!エピソード」には聞くは笑い語るは涙の話になり、大うけでした。
その夜は西武の堤さんの別邸、広大なお庭の旅館に宿泊しました。とにかく広いので迷うことばかりで、方向音痴の私は最後まで一人では自分のお部屋に帰れませんでした。お部屋は女子3人で日本間、洋間、化粧部屋、玄関間などいくつもあり、絹のお布団の中にもぐって修学旅行の再来にしてはちょっと贅沢な夜を過ごしました。
私の拙い写真のいくつかをお見せしましたが、旅が私の仕事です。この冬の数か月はまるで呼び寄せられるように十数回東北に参りました。降車駅のホームに最初の一歩を踏み下ろすと、キーンと研ぎ澄まされたような冷気に、慌ててオーバーの襟を掻き合わせ、チラチラとほほに冷たい感覚・・・!見上げれば鉛色の空からは容赦なく雪が肩に頭に降りかかってまいります。
かと思えば、那覇に降り立てば人々のアロハシャツがまぶしくて「ここは何?天国?」と戸惑うほど、鮮やかな色のブーゲンビリアが出迎え、空は明るいブルー風は温かく優しくほほを撫でていきます。
日本は美しい国。同じ時が回っていても全く違う風土、景色、人々。
春の桜の蕾も、東北の雪も、ブーゲンビリアも、八坂の塔も人生の中で出会う忘れがたい思い出です。出会う時々にこの平和を、この小さな幸せの数々がずっと続くことを願わずにはいられません。
昨日、映画『この世界の片隅に』を見ました・・・・。